緊急逮捕-独占欲からの逃亡ー
彼女は、お気に入りのおもちゃである楓馬を取られたくないから必死に駄々をこねている。

そして楓馬君も。
私の事をおもちゃとしてしか見ていない。
取られたくない、なくしたくない。

だけど、いつかは捨てられる。

「そういうふうに思ってたんですね」

「いや、おもちゃって言ったのは比喩だけど…」

「もういいです」

一瞬にして空気が凍る。
何も聞きたくない。何も話したくない。

普段なら、ここからさらにヒートアップした言い争いが続くんだろうけど、今回ばかりはそんな気になれなかった。
加熱されるエネルギーはどこにもなくて、ただ心が冷え切っていくのを感じていた。

私の機嫌を察したのか、楓馬君もそれ以上話してくることもなくて、重たい沈黙が部屋を支配した。
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