緊急逮捕-独占欲からの逃亡ー
まったく…。
本当に、軽い気持ちでやってんだろうな。
こんなことになるなんて、まったく想像してなかったというタチの悪さ。
その意識の低さが余計に俺をイラつかせる。
「5、4、3、2…、1…」
言わない気なのか、動転して言葉も並べられないのか。
そんなのどうだっていい。
多少傷つけるくらいどうってことないだろ。
こっちは負傷してんだ。
大丈夫。
傷のつけ方には多少心得がある。
ナイフの先が男の首元の皮膚に触れ、悲鳴が響いたとき、思わず手がとまった。
悲鳴に驚いたからではない。
泣こうが喚こうがその刃を止めるつもりなんて一切なかった。
手が止まったのは、倉庫の入り口に人の気配を感じたからだ。