緊急逮捕－独占欲からの逃亡ー
倉庫を出ると、神谷が恭しく待っていた。

「楓馬様お怪我の具合は？」

「どうってことない」

「ちえみ様の手当ては如何いたしましょう。
ナイフの傷を他の方に見られたら、問題になるのではないでしょうか」

「それも問題ない。
ほら」

突き付けていたナイフの刃を掌に突き立てると、柄の中に刃が引っ込んだ。

「玩具だったんですか」

「あぁ。これが当たっただけで勘違いしてくれて助かった」

「楓馬様のことですから、てっきり本物かと」

「少し前なら迷わず本物取り出してたよ。
でも、そんなことが莉子にバレたら、大げさに騒ぐに決まってる」

「いよいよ屋敷を出ていかれてしまいますね」

「でしょ？
最近抵抗も激しいし、連れ戻すのも大変だ。

まぁ、これでひと段落だな」

あー、眠い。
これでやっと落ち着いて眠れる。
< 187 / 248 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop