緊急逮捕-独占欲からの逃亡ー
9.大学祭

1)浮足立つ日


そうこうしているうちに、大学祭の日を迎えた。
見慣れた正門も、今日は派手に装飾がなされている。一歩足を踏み入れると、あちこちにテントが立ち並んで、学生が活気良く店の宣伝をしてる。

そんな賑やかな空間で、異彩を放つ人物が1人。
だるそうに大学内をうろついている、警察官。学生がコスプレをしているわけでもなくて、本物の警察官なんだけど、きっと中にはコスプレだと思って見てる人もいるんだろうな。

なんて、その見覚えのある後ろ姿を見ながら思う。

「何してるんですか、楓馬君」

「見てわかるだろ。警備だよ。

正直、俺だってこんなことしたくないんだけど、でも毎年のことだから仕方ないでしょ。

あんたにちょっかい出す奴がいたら取り締まれるし、いいんだけどさ」

ポケットに手を突っ込んだままのその姿で警備をしているなんて、良く言えたものだ。
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