緊急逮捕-独占欲からの逃亡ー
少し前のこと。
突然真っ暗になった部屋に混乱していた私は、廊下に出ようと部屋の中を徘徊し、足をぶつけまくっていた。
そこにタイミングよく駆けつけてくれた茅ヶ崎さんに助けられていた。

顔も見えない。
だけど気配だけはちゃんと感じる。

この座った私たちの間の空間が、私たちがいつの間にか作っていた距離。
今なら離れた距離に気づけるのに、当時はじわじわとできていく距離に全然気づけなかった。

「俺、ここにいていいのかな。
社長の息子さんが戻ってきたら、嫌な気になるんじゃ…」

「移動するのも危険ですよ。
明るくなるの待ってたほうが…」

「なら、そうしよう。
藤田さん、雷の音も暗闇も苦手だからね。

それにしても、藤田さんが結婚するって聞いたときはびっくりしたなー。
俺なんかまだ吹っ切れてないもん。
女性の方が切り替え早いって言うのは、本当みたいだな」

「切り替えって言うか…、え?」

吹っ切れてない?
吹っ切れてないって言った、今?

こんな冗談みたいに、笑いながら…。
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