緊急逮捕-独占欲からの逃亡ー
「今日、私大学のゼミがあるので出かけます」
「あぁ、行ってらっしゃい。
ってか、大学生だったんだ。知らなかった」
本当に知らなかったのかどうかは怪しい所。
確かに私からは言ってなかったけど、神谷さんなら調べが付いていてもおかしくない。
もし、本当に知らなかったんだとしたら、それはそれで驚きだよ。
よく身元の知れない人間をひとつ屋根の下に置いておけるよね。
思ってみたら、私も彼のことを全然知らない。彼も私のことを知らない。
無関心と言うか、なんというか。
たぶん、彼の思い通りになれば、私が何者だろうと関係ないんだと思う。
「いいよ。大学にいる間は無理に連れ戻すようなこともしないから安心して行って来ればいい。
ただ、わかってると思うけど、そのまま逃げたら駄目だから」
「言うと思いましたよ…。
わかってます。逃げるのは、もう少し準備が整ってからにするので」
「それじゃ、一生ここにいることになるね。
大歓迎だよ」
そんなの絶対に御免だ。
ここから逃げ出すことなんて、どうせ私には無理だと思ってるだろうけど、いつかその伸びきった鼻をへし折ってやる。