私の中におっさん(魔王)がいる。~毛利の章~

 * * *

 この町には、至るところに地下への入り口が掘られているらしい。
 私達が通った地下への階段は、本格的な冬になったら、硬く閉ざされてしまう。
 雪が降るまでの、秋限定の階段だったらしい。

 冬になると、店の中や家の中から地下街へと降りるのだそうだ。
(雪が積もると、外の穴は開けてられないもんね)
 秋の間は、地上でもお店はやっているのだけど、この地下街が観光地化しているらしく、みんなこっちに流れてくるのだそう。
 それで、ゴーストタウンみたいだったみたい。

 春と夏は地下街は閉められてしまうんだって。
 その代わり、一部の地下室を商業用の冷蔵庫、冷凍庫として使うんだそうだ。
 固有種である氷結竜(ラピスドラゴン)を使って、冷蔵庫代わりにしたり、冷凍庫代わりにしたりするらしい。
 そんな説明を聞きながら、私はある家の地下までやってきた。

 地下から地上への扉には、番兵がいる。
 番兵は毛利さんにお辞儀をし、扉の鍵を開けた。
 地上へと続く階段が現れ、私達はその階段を上り始める。

「――長い!」
 真っ直ぐに続く階段は、果てしなく長い。
(もう何段上ったんだろう?)

「そりゃそうですよ。この階段、二百段以上ありますからね」
「……マジで?」
 そんなにあるの?

「体力が無いな。小娘、運動くらいしろ」
「してます!」
 答えた直後に、思わず、ゴロゴロ寝転んで、雑誌を片手にポテチを食べる自分が浮かんだ。
(……してるかな?)

 いや、体育の授業はちゃんと出てるし、朝は遅刻して毎日のように走ってるし、してる! してるはず!
 そう自分に言い聞かせた時、
「フッ」
 毛利さんに鼻で小バカにされた。
 ちくしょー! 余裕で上りきってやろうじゃないのぉ! 見てなさいよ!
< 11 / 103 >

この作品をシェア

pagetop