私の中におっさん(魔王)がいる。~毛利の章~

 * * *

 こっそり、こっそりと、気配を消すよう努力して、私はなんとか玄関から外へ出た。
 何度か使用人らしき人に出くわしたけど、その度に部屋に入ったりして、事なきを得た。でも、どの部屋も、空っぽだった。畳が敷いてあるだけで、家具が一切無い。
 掃除はしやすそうだけど、本当に人が住んでんのかな? ってくらい、何もない家だった。

 初めは地下室に向おうと思ったけど、鍵がないし、部屋の中心に行けば行くほど、使用人さん達の声が聞こえてくる気がしたから、玄関から出ることにしたんだ。
 そしたら、ほら、大正解だった。

 家の外側に行けば行くほど、人の気配はなくなるし、最後の方は隠れなくても済んだほどだもん。

 外から見た家は、屋敷と呼べるほど立派で、大きかった。
 白川郷の家を大きくして、横に二つくっつけた感じ。奥行きも、相当ありそうだ。
 私は、少しだけ屋敷を見上げてから、走り出した。
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