私の中におっさん(魔王)がいる。~毛利の章~
* * *
「わ~い!」
しばらく、るんるん気分で歩いた。
玄関から拝借してきた下駄が、カラコン、カラコンと鳴る。
一ヶ月何も運動をしてなかったから、走ったらすぐに疲れてしまった。和服って走りにくいし。でも、そんなことは関係ない。
私は嬉しくて、楽しくて、辺りを見回しながら歩いた。
木々に囲まれた小道で、木以外には何もなさそうだったけど、このまま歩いていれば街に出られるはずだ。
街に出たら、地下に潜って探検してみるのも楽しいかも。
それとも、さっさとおさらばして、倭和に戻ってみるのも良いかも知れない。
みんなも戻ってるかも知れないし、そうしたら帰る方法を探すんだ。
「でも、一つだけ気になることがあるんだよねぇ」
あの、倭和で襲ってきた連中。
あの連中って、結局なんなんだろう?
柳くんにも、毛利さんにも、訊き忘れてたんだよね。
柳くんとは、怠輪から帰ってから会ってないし、怠輪では訊ける雰囲気でもなかったし。
毛利さんとは、会えばケンカしかしないから、つい聞き逃しちゃうんだよなぁ。
でも、命が狙われる危険性があるのなら、倭和に戻るのは危険なのかな、やっぱ。
「ってことは、やっぱこの国で帰る方法を見つけなくっちゃ!」
だけど、とりあえず、もうあの屋敷には戻りたくない!
監禁だか、軟禁だか知らないけど、まっぴらよ。
「見てろよ! 自分で見つけてみせるんだから!」
私は意気込んで、小走りで走った。