私の中におっさん(魔王)がいる。~毛利の章~
第七章・怠惰王
 翌日原さんに会った時に、始末書の話をして謝ると、原さんは減俸ものかと思ってたけど、あれだけですんで良かったと笑って、同時に驚いていた。
 そして逆に、私を危険な目に遭わせてごめんねと謝罪された。
 
 原さんのギャップについてはあえて訊かなかった。
 とりあえず、この人を怒らせないようにしようとだけ心に決めた。

 夜壱さんは、年中世界中の足運屋を偵察に回っているらしく、千葉には三年ぶりに訪れたのだそうだ。
 冬が終われば、千葉を出て行くと言っていた。
 なので、冬が終わるまでは屋敷に遊びに行かせてもらったり、アルバイトという形で足運屋で雇ってもらっていて、ただふらふらと街を歩いているよりは断然楽しい。
 
 こっちの世界の雪かきは、翼竜に乗って屋根の雪下ろしをするから、その翼竜を借りに足運屋にやってくる人は大勢いて、書類書きの手伝いをしている。
 その時に仲良くなったおばあさんの家の雪かきを手伝ったこともある。
 寒かったけど、翼竜を操るのは楽しかった。

 夜壱さんや、原さんに教えてもらって、ラングルに一人で乗れるようになった。コウさんにも教わったんだけど、コウさんが乗れるのはなんだか意外だった。
 バイトに反対しそうな毛利さんだったけど、意外な事にコウさんと原さんを護衛につけるならバイトを許可すると言ってくれた。
 
 二人にはなんとなく申し訳ない気がしたけど、なんだかんだで足運屋の仕事を手伝っている二人は楽しそうなので、一安心してる。
 夜壱さんのところだというところも大きかったのかも知れない。

 でも、毛利さんに会うと、たまに毛利さんの横にいた女性がちらつく。顔は見えなかったけど、多分可愛いんだろうな。
 そう思うと胸が苦しくて、私はあの光景を頭の隅に追いやる。だけど、ふとした時に出て来て、どん底みたいな気分にさせた。

 そんな風にして、早くも二ヶ月が経った。
 寒さもまだまだ続く中で、私とコウさんと原さんは地下街を歩いていた。

 その日はバイトのお休みを貰っていて、屋敷でゴロ寝していたんだけど、バタバタと廊下を走る音がしてきて、なんだろう? と廊下を覗くと、コウさんが慌てて廊下を駆けて行った。
 私はその背中に声を投げる。
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