私の中におっさん(魔王)がいる。~毛利の章~

「どうしたんですか?」
「ああ。ゆり様」
 コウさんは驚いて振り返った。

「今、毛利様から伝書が届きまして。書類を届けて参りますね」
「書類?」
 何も持ってないみたいだけど?
 首を傾げると、コウさんは巻物を袖から出して軽く振った。

「ああ、それが書類ですか。どこに届けるんですか?」
「お城ですよ」
「お城! 私も行っても良いですか?」
「ええ。ただし、私から離れてはいけませんよ」
「はい!」

 ということがあって、私達は原さんを護衛にお城へと向っていた。
(お城。なんてすてきな響き♪)

 初めて安土に来た時に見た白銀のお城は、今は雪にまぎれてとても幻想的なんだ。そんなお城の中に入れるなんて、嬉しいな。
 私はウキウキしながら地下街を歩く。
不意に、原さんに肩を引かれてお店側に移動させられた。

 胡乱に原さんを見ると、原さんは道の真ん中を見つめている。大名行列のような一行が大通りを通過していくところだった。でも、江戸時代のようにみんなが平伏していることもなく、賑わっている中を厳かに通り過ぎて行っただけだった。
 どうやら、私はその中の一人とぶつかりそうになっていたみたいだ。

「ありがとうございます」
 お礼を告げると、原さんはにこりと笑んだ。
「あれはなんだったんです?」
「あれは、多分小関の一行でしょう」

 少し前に歩いていたコウさんが、一行の最後尾を見つめながら言うと、原さんが補足するように言った。

「ドラゴンの討伐に出かけた隊でしょうね。今から城に出向くんじゃないですかね」
「お城に行くんだ。じゃあ、私達と一緒ですね」
 私は、一行の背中を見つめた。
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