私の中におっさん(魔王)がいる。~毛利の章~
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――聖女と魔竜。
六五〇年前、数頭のアジダハーカという魔竜が世界の頂点に君臨し、全ての動植物の命を等しく奪っていた。
アジダハーカは吸魂竜(ドラグル)という竜が突然変異した生物で、それが繁殖し、脅威をもたらしていた。
そんなある日、人々はある法則を見つけ出した。
アジダハーカは、命を奪い、出てきた魂を捕食していた。
吸魂竜は、ドラゴン以外の生物の魂を吸い取って、それを糧とする竜だった。だが、アジダハーカは、吸魂竜と違って魂だけを抜き取る事ができなかった。その代わり様々な能力を保有し、それによって生物に死をもたらしていた。
人々は考えた。
アジダハーカの餌である魂。それを塊(かたまり)とし、アジダハーカを操れないだろうかと。
ある一族の中に伝わる術に、相手を操る物があり、それを塊の中に封印する。それをアジダハーカへ与えれば、操れるようになるのではないか。
人々は、吸魂竜を捉え、数多くの人間や、動物の魂を吸い取り、磁力を使う能力者が魂を固めた。その魂の数、約五千。
巨大なエネルギー態の完成である。
それを、アジダハーカに与えてみたが、術は発動しなかった。発動したが利かなかったのかもしれない。
そこで、アジダハーカの命も吸われる様にと、吸魂竜の能力を分析し、その能力を加えた。
これならアジダハーカを吸い取って倒せるか、操れるかするかと思われたが、吸い取れたのは、アジダハーカの命の少し分だけ。
それどころか、塊が姿を現していると、その内に吸魂竜の能力が発動し、勝手に魂と体を吸い上げていく事態となってしまった。
困り果てた人々は、器に封印することにした。しかしどんな器に入れても発動してしまう。結界師の結界を持ってしても漏れ出してしまう。
そこで生き物に封印することにしたが、中々合うものが現れない。
どんな生き物にも適応しない。触れたとたんに魂を体ごと持っていかれる。
こうなったら、一か八か、アジダハーカに入れてみるしかない。
入れて体ごと吸われて死ぬか、逆にパワーアップするかはわからない。
結果、アジダハーカは内部から魂ごと吸いこまれて消えた。
人々はその魂の塊を『魔王』と呼んだ。
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