私の中におっさん(魔王)がいる。~毛利の章~
第十三章・密会
「まさか、あなたがこちら側の人間だったなんて思いませんでしたわ。廉の玉、廉璃はともかくとして、このわたくしが知らないだなんて! 本部に連絡した時のわたくしたちの驚きようが解りまして?」
「そういうのは良いですから。さっさと本物の封魔書見せて下さい」
暗闇の中で、二人の低声が聞こえてくる。少女の声と、少年のような声。部屋の中のようだが、光が一切ない。窓が一切ないようだ。
どちらかのため息が小さくこぼされ、ごそごそと衣服を探る音がした。差し出された巻物を、少年のような声をした者が受け取った。
「写しですか?」
声は問い、少女は、「ええ」と短く返事を返した。
「本部にはあなたが報告を?」
「ええ。入れておきますわ」
「三条の様子は?」
少年らしき人物の問いに、少女らしき人物は押し黙った。
そして、言い辛そうに口を開いた。
「それは、功歩に潜伏中の同士に聞いてくださいませ。いずれ、報告が上がりますわ」
明確な答えが聞けなかったが、気にした様子もなく少年らしき声は話を打ち切った。
「そうですか。では、僕はこれで」
部屋のドアが閉まる音がして、少女は呟いた。
「本当に、考えの読めない方。問題児というのも頷けますわね」
どこか侮蔑するように言って、少女らしき人物は手を叩いた。
暗闇の中で、明るく甲高い音が響く。
「さて、機関に報告を急がなくては!」