私の中におっさん(魔王)がいる。~毛利の章~
* * *
深い森の中に、棄てられた廃屋があった。
レンガ造りの外壁が崩れ、荒れ果てた内装が覗いている。その崩れた一角から、ひょこっと少年が現れた。先程まで、低声で話していた人物だ。
大きな目に、黒髪。――柳だ。
薄曇りの弱々しい陽光を浴びながら、柳は歩き出した。適当なところで足を止め、大木に寄りかかって巻物を開く。
「ふむふむ……なるほどね。そういう事か」
柳は一人で納得した声音を上げて、大きな目を細めずに、にやりと笑んだ。そのすぐ後で、表情が曇った。
柳にしては珍しく、辛そうな表情だった。
「毛利さん、ごめん。報告出来ないや」
呟いた声音から、心痛がひしひしと伝わってくる。
柳は、自嘲するようにため息を吐いた。
薄曇の天を仰いだ。
(これから、どうなるのかなぁ?)
予想は出来るけれど、その予想が外れれば良いと、柳は思った。