私の中におっさん(魔王)がいる。~毛利の章~
第十六章・魔竜復活

 沈んで行く。
 眠気に誘われるようにだるく、快い。
 形を成さず、一つの光の塊となって、沈んで行く。
 眼下には、オレンジ色の大きな光の塊。
 その一部に、紫と黒が混ざり合ったような欠片が鈍く輝いている。
 一センチにも満たないそれは、鱗のようにも見えた。
 夢現の中で、私は大きな光りと混ざり合った。

 * * *

 白い光が瞼をゆっくりと侵食するように広がっていく。
 重苦しい瞼を開けると、ぼんやりと人影が映った。
 ぎゅっと強く瞬きをすると、視界が鮮明に変わっていった。

「とうとう来てしまったか」

 妙に聞きなれた、低く渋い声が突然後方から届いた。
 振り返ると、少し離れたところに彼は立っていた。

「……あなたは」
「久しぶりじゃな」
 マントを纏い、鎧兜を身につけた、髭の生えたおっさん。
「あの時の!」

 私は思わず声高になった。
 するとおじさんは、苦笑して、

「ここを覚えておるかな?」

 促されて、キョロキョロと見渡すと、そこは真っ白な空間だった。
 無限に広がっているんじゃないかと思うくらいに広く、果てが見えない。

「ここって、最初の」
「そう。汝と、我が出会った場所。――魔王の中だ」
「え?」

 ここって、魔王の中だったの!?

「じゃあ、あなたは一体?」
「我は、名を白猿(はくえん)。倭和国の乎関(こせき)であった」
「乎関?」
「五百の兵を束ねる者の呼称じゃ。そこそこの地位じゃな。だが、倭和での乎関ともなれば、他国の三関並みと言わしめておるのじゃぞ!」

 白猿さんはえっへん、と胸を張った。
 なので、私は「お~!」と相槌を打って、拍手を送った。
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