私の中におっさん(魔王)がいる。~毛利の章~
* * *
『竜王機関から任命されて、僕は、先の大戦に入る前に毛利さんに接触したんです』
『そっか。……ちょっと待て。先の大戦って、柳くんっていくつだ?』
雪村くんは一瞬納得しかけて、慌てて尋ねた。
たしか、世界大戦が始まったのが十年前だから……柳くんは二,三歳ってことになるはずだけど……。
私も雪村くんと同じように訝しがって柳くんを見据える。
すると、柳くんは目を細めずに笑った。
『僕は、見た目よりず~っと年上ですよ。あなたよりもはるかにね』
明朗に発せられた声音はどこか、自嘲じみていた気がした。
『竜王機関は基本的に国やそれに所属する者などに深く関わる事はしません。自分たちが歴史に名を残したり、歴史を造ったり、操るような事はしません。その国やその国に生きる者達がどのように判断し、生きていたかを記すだけです。なので、僕は毛利さんの決断に口を挟む事はありませんし、あなたのなさろうとする事を止める気もありません」
『そっか』
柳くんのきっぱりとした物言いに、雪村くんは安堵の色を見せた。
そして、真剣な顔つきで毛利さんを見据えた。
『この方法には毛利さんが必要不可欠なんだ。俺を信じてくれるか?』
雪村くんの問い掛けに、毛利さんは深く頷いた。