私の中におっさん(魔王)がいる。~毛利の章~

『なんてことしてんだよ、あんた! 自分が何したか分かってんの!?』
 突然の怒鳴り声に視線を向けると、クロちゃんが毛利さんの胸倉を掴んでいた。でも、毛利さんはクロちゃんを見向きもしない。私を茫然と抱きしめていた。

『何故……起きぬ』
 悲痛に歪んだ声音で呟いた毛利さんに、クロちゃんは軽蔑の眼差しを送った。

『起きるわけないだろ。魂がないんだから。普段のあんただったら、三条の企みに真っ先に気づいたはずだけどね』
 冷たく言って、クロちゃんは毛利さんから手を離した。
『……企みだと?』
 毛利さんはぽつりと呟いて顔を上げた。

『あんたに説明してる暇はない。ぼくは三条を止めないと。あいつがあれを呼ぶ前に、ぼくが呪符を手にする』

 クロちゃんは上の空で呟いて、駆け出した。
 その後を翼さんが追って行く。
 そして、血相を変えて原さんもその後を追った。

 アニキは月鵬さんに何かを告げて、駆け出した。
 座り込んだ月鵬さんは立ち上がる。座り込んでいる毛利さんに、巻物を差し出した。

『本物の封魔書です』
 そう告げて踵を返す。成り行きを見守っているコウさんの横を通り過ぎていった。
 毛利さんは巻物を開いた。
 すると映像は、巻物に向けられた。上空から覗き見るように映し出された巻物内容は……。
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