私の中におっさん(魔王)がいる。~毛利の章~

 * * *

「まさか、そんな……」
 封魔書を読み終えて、私は混乱した。
 白猿さんが私の肩に手を置く。振り仰いで出会った視線は、それが真実なのだと語っていたような気がした。
 
 目の端で、毛利さんがゆっくりと立ち上がったのが見えた。映像に視線を移すと、毛利さんの瞳は、さっきまでの空虚さは消え、あきらかに強さが戻っていた。

『毛利様、ご指示を』
 コウさんが跪いた。
 その表情はどことなく嬉しそうだった。
 毛利さんはコウさんを一瞥して、
『町の者を退避させろ』
『ハッ! かしこまりました』 

 コウさんは勇ましく返事を返し、立ち上がった。
 そして、毛利さんは能力を発動して、風のような速さで部屋から姿を消した。
 顛末を見届けていた柳くんも、毛利さんの後を追うように消えた。
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