私の中におっさん（魔王）がいる。～毛利の章～

　＊　＊　＊

「準備は良い？」
　私は静かに尋ねた。
　その場にいる者全てが手を繋ぎ、呼吸を落ち着かせることに集中する。

　毛利さんとの修行を思い起こした。
　意識を集中させ、心を無にすると、今までとは違う現象が意識の中で起こり始めた。
　様々な映像が脳裏を駆け抜ける。その全てが、暖かくなんだかすごく幸せ。
　
　一瞬でそれが流れると、シンと静まり返った雪原のように、白い光景に包まれ、そして、魂がひとつに繋がった感覚がした。
　その瞬間、緩やかに瓦解していく。

　魔王の白い空間が、解けるように融けていった。
　私を含めたみんなのどよめきが一瞬だけ上がったけど、次の瞬間、私達は理解した。
　この呪縛が終わるんだって――。