私の中におっさん(魔王)がいる。~雪村の章~

「自分達は戦闘民族なのですよ。貴方がどう思っていようが、世間じゃそう言われてる。だから、傭兵の仕事が来るんです。勘違いなさらないで下さい。功歩には仕事で来ているのですよ。我々は、功歩の民である事を許されたわけではないのです」

「でも、俺達は功歩に十五年も住んでて、戦争が終わってからは他の仕事をしてるじゃんか。俺にとっては、このクラプションは、功歩は、故郷だせ?」

 廉抹は怒りで眉が跳ね上がった。だが、雪村の言う事は、廉抹にも理解は出来た。
 雪村が功歩にやって来た時、彼は二歳児だった。以来ずっと、この功歩国ですごしていて、旅をした記憶も二度しかない。この十五年の間で生まれた三条の子も、同じ反応を示すだろう。
 廉抹は内心で煮えたぎる怒りを抑えて、きっぱりと言い放つ。

「だったらなおの事、貴方は出陣すべきだった」
 雪村は訳が分からず、怪訝な瞳を向けた。
「貴方が蹴った、三度目の出陣依頼。その場所を貴方はもう覚えてらっしゃらないでしょう」
「えっと……」

 雪村は思考を巡らせたが、思い出せなかった。何故なら、依頼が来たその時、雪村はろくに話も聞かずに伝令を追い払ったからだ。

「その場所は、瞑、永に攻め込まれた町、ジョタク。まさに最前線です。貴方が功歩を故郷だとおっしゃるのなら、出陣してジョタクを守るべきだった。ジョタクがどうなったか、憶えていないでしょう?」
「……ごめん」
 呟くように謝った雪村に、廉抹は明確に告げた。
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