私の中におっさん(魔王)がいる。~雪村の章~
* * *
町の建物は、外から見た時と同じように、その殆どが同じ造りだった。
橙色の屋根、白い石壁、細長い窓の家が立ち並び、丸い窪地に合わせるように円形に並んでいた。
上から見ると、建物が綺麗に五重丸程度の円を描き、道のために切れ目が入っているように見える。
まるでバームクーヘンのような町だ。
中心に向うと、大きな円形の広場になっていて、真ん中にある噴水を中心に隊商が店を開き、物を売り買いしていた。
セシルはその中の一人、中年の太めの男性に親しげに話しかけた。
「カナリ! 久しぶりね」
「おお。セシル! 久しぶり、何か良いの入ったかい?」
「入ったわよ。ほら!」
セシルは喰鳥竜の荷物の中から三十センチ程度の袋を取り出した。
カナリと呼ばれた男性は、それを開いて感心したように目を見開いた。
「おお。こりゃ良い竜皮だなぁ」
「でしょう?」
「傷が一切ついてないなんて、珍しいじゃないか」
「ここにいる雪村のおかげよ。すごいでしょ」
セシルは誇らしげに言って、雪村の腕を引いた。
ほけっとした顔をしていた雪村は、褒められて嬉しそうに頭を掻く。
「そりゃすごいな、兄ちゃん。セシル、良い奴を子分にしたじゃないか」
「子分じゃない! ホントに、失礼なやつらだっ!」
結ががなると、セシルは得意げににやりと笑んだ。
バチバチと火花が散っていそうなやり取りを見ながら、ゆりは内心呆れ果てていた。
(これって、三角関係にしか見えないんだけど……)