私の中におっさん(魔王)がいる。~雪村の章~
* * *
翌朝、昼前に風間は出立した。
ゆりと雪村が見送りに出たが、雪村は気まずそうな表情を浮かべていた。
見かねた風間がいつも通りに小言を連発すると、雪村はムキになり、拗ねてその場を退散した。
風間はその姿を見送りながら、帰って来てから、ゆりを好きだと言ったのは嘘だったと告げようと心に決めた。
(それまでは少しだけ、意地悪しておこう)
そんな風に思いながら、風間は残されたゆりに視線を移した。
「雪村様を頼みます」
優しい笑みを浮かべ、一言だけ告げて喰鳥竜に跨った。
ゆりはその姿を見つめながら、何故だか先程の風間の笑みが心を占めていた。それは胸の高鳴りを報せるものではなく、静かで、印象的な『何か』だった。
それは、予感めいたものだったに違いない。