私の中におっさん(魔王)がいる。~雪村の章~
「あの、風間さんってよく出かけるんですか? なんか、一年の殆どは世界中飛び回ってるみたいな、そんな様な話を雪村くんから聞いた気がして」
そう質問をしておいて、はたと気づいた。
もしかしたら、風間が世界中飛び回っているのは間者の仕事のためなのではないだろうか。まずい事を訊いたかも知れないと、ゆりはぎゅっと口を結んだ。
だが間空は背を起こし、大して気に止めない様子でゆりを見据えた。
「風間は、君を手に入れるために世界を回っていたんだよ」
「――私?」
ゆりは一瞬呆けたが、すぐに自分の中の魔王のことを言っているのだと気がついた。
複雑な思いがしたが、同時に何故世界を旅してまで魔王を手に入れたかったのか気になった。それは、風間個人の意思なのか、それとも別の何かの意思なのだろうか。
「あの、どうして魔王が欲しいんでしょうか?」
おずおずと尋ねたゆりに、間空は微苦笑を送った。
「そうだなぁ。まあ、君には知る権利があるかも知れないね」
どことなく哀しげに笑って、間空は膝の上に手のひらを置いた。
「数年前、私は雪村と風間を部屋へ呼んだ。そしてとある事実――三条の本懐を話したんだ」