私の中におっさん(魔王)がいる。~雪村の章~

「六百五十年前、この世界には恐るべき魔竜がいた。アジダハーカと呼ばれた魔竜は、とても醜悪で、とてつもなく強かったと云われている。とてつもない数の命が奴等の餌となっていたのだ。そこで、我々の先祖、三条の王族と五人の仲間が中心となって、魔竜を倒そうとした。やつらは生き物の魂を糧としていたため、魂の塊を作りその中に三条の『操相(そうそう)の呪符』を入れることで魔竜を操ろうという計画があった。そこで生まれたのが第一の魔王という」

「第一の、ということはまだあるということですね」

 真剣な眼差しで尋ね、興味を示した風間の一方で、雪村は興味のきょの字も示さない様子で眠たそうにあくびをした。

 間空は呆れた気持を含みながらため息をついてみせたが、雪村は気づかなかったようで、つまらなそうに鼻を穿りだしたので、間空はいよいよ怒鳴りそうだったが、ぐっと堪えて話の続きを始めた。

「そうだ。その計画はその時は失敗し、終わってしまった。だから、彼らは次の計画に移した。もう一度魔王を作り出し、その魔王に今度は吸魂竜(ドラグル)という今は絶滅してしまったドラゴンの、魂を吸い出す能力を加えたのだ」
「どのようにして加えたのですか?」
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