私の中におっさん(魔王)がいる。~雪村の章~
「まったく!」
間空は呆れ果てて腕を組み、足を崩して胡坐をかいた。
「――で、どこまで話したかな……?」
「第二の魔王を創り、能力を加えたところまでです」
「ああ。そうだな。――それで、彼らは第二の魔王を魔竜・アジダハーカへ入れる事を試みた。そしてその結果、魔竜は内部から魂ごと吸われて死んだのだ。しかし、耐性を持つアジダハーカが一匹だけ出てしまったのだ。それだけでなく、奴はあらゆる能力を使うようになってしまった。魔王の中にいる者達の能力だ」
「魂だけになっても能力って使えんの?」
初めて興味を持って尋ねた雪村に、間空は渋い顔を向けた。
「らしいな。詳しい事は私にも解らんのだ」
頭を捻る間空に、風間は自論を述べた。
「おそらくですが、魔王自体にそのような術式が組み込まれていたのではないでしょうか?」
「確かに。それはありえるな。条王・紅説(こうとく)は雪村、お前と同じように他人の呪符を扱い、また自らや他人の呪符を他の者に扱えるように出来た呪術師であったらしいからな。また、多くの術式を研究し成功させてきた人物だ。転移術も彼の術式だからな」
「へえ」
雪村は関心を示し、一瞬瞳を輝かせた。
「ますます窮地に陥った人類だったが、一念発起し、三度目の魔王を創り、今度は魔王の器を探して、その中に魔王を入れたのだ」
「なんで?」
「魔王は、吸魂竜の機能のせいで敵味方関係なく、あらゆる魂を吸い出すようになってしまったからだ。第二の魔王からな。だが、適応した魔竜のように、魂を吸われない体の持ち主もいるのだ。その稀な器を探すために彼らは呪陣を創り、異世界から適応できる器、聖女を呼んだのだ」
「ふ~ん」
雪村は深く考えずに頷いたが、風間は逆に関心を強くしたように思えた。異世界の存在が本当にあるのかどうか強く興味を惹かれたようで、腿の上に置いてあった手をぐっと前の膝まで押し出した。