私の中におっさん(魔王)がいる。~雪村の章~

「お前にしては珍しく鋭いな、雪村。確かに、その通りだ。当時は紅説と、もう一人、呪術者がいた。その呪術者は二条の人間であったが、二条家で唯一処刑された者でもある。紅説を敬愛し、王族でありながら従者にまでなるほど紅説に傾倒していたため、危険と判断されたのかも知れない。その者を処刑した諸外国の王達は焦っただろうな」

 間空は皮肉たっぷりに笑う。

「お前らも知っての通り、呪術者ってのは、我々の中でも珍しい。そうそう現れるものではないからな。ましてや、紅説やお前のような――な、雪村」

 期待を込めて見据えた間空だったが、雪村はもぞっと口を動かして、罰の悪い表情をしただけだった。
 期待した反応は得られなかったが、間空は、まあいつもの事だと話を戻す。

「だが、そんな事を理解している者は少ない。だから、当時は、三条だとバレると各国から狙われた。何人も攫われ、呪術者ではなく結界師だと分かると、女子供も関係なく殺された。まあ、もっとも、狙われるのは捕まえ易い女子供が多かったと聞くがな」

 言って間空は哀しげに瞳を伏せる。
< 75 / 148 >

この作品をシェア

pagetop