私の中におっさん(魔王)がいる。~雪村の章~
「そんなわけで、その存在を狙われ続けた御先祖は、戦いながら各国を渡り歩くしかなかったのさ。そうして六百五十年の時が流れる中で、紅説の時代に在った国は亡国となり、魔王も魔竜も伝説と化し、世界中を渡り歩いて戦い続けた我々は、何時しか畏敬や畏怖の象徴となったのさ。怠輪国の穴倉の中に代々、執事や執事補佐によって書かれた手記があるから、時間がある時に読んでみなさい。特に雪村、お前はな」
言い聞かせるように強い瞳で見た間空の視線を、雪村はさっと避けた。
また、お前は――と、呆れると同時に雷を落とそうとした間空を、風間が真剣な声音で遮った。
「親父様、三条の本懐とは何ですか?」
確信を得ようと光る瞳に、間空は一瞬ためらた。だが、二人を強く見据える。
「三条の本懐とは、三条王家――条国の復活さ」
その答えを聞いた風間の表情が途端に大人びたものに変わった。
そしてそれを、間空は今でも時折思い出す。