私の中におっさん(魔王)がいる。~雪村の章~
「聖女の話はしたね。聖女は死んだが、器としての役割はまだ果たせたんだ。第一の魔王と違って、第二、第三の魔王はそこに存在するだけで生き物の魂を吸い取ってしまう。だから、第三の魔王は聖女の体の中に戻されたんだよ。どのタイミングで戻されたのかは分からない。王国が攻め亡ぼされる前だったのかも知れないし、その後だったのかも知れない。だが、魔王は聖女の中に戻された。そして時が経ち、風間が封印されし地に赴いたとき、聖女の器や結界はあと十年も持ちそうになかったのだ」
「もしかして、それで……?」
ゆりははっとして、固い声音を出し、間空は頷いた。
「そう。始まりはそうだった」
「始まり……?」
遠い目をした間空をゆりは見据えた。
「聖女を発見したのは風間だった。と言っても、封印されし地は伝承されていたが、少なくとも私が知っている限りではその地に行った者はいなかった」
「どうしてですか?」