私の中におっさん(魔王)がいる。~雪村の章~
第十一章・侵入者来る
男が叫んだ直後、一瞬だけ緊迫した空気が流れ、間空はゆりを見据えた。
不安な表情を浮かべたゆりに、間空は落ち着いた調子で告げた。
「ここに居てくれ」
「……はい」
間空は椅子から立ち上がり、ドアの前に待機していた男に歩み寄る。
「留火(ルカ)、状況は?」
「今、結が地下へ向っています」
その一言にゆりの耳はぴくんと跳ねた。弾かれるようにドアの方向を向くと、間空が苦笑を浮かべていた。
「大丈夫か?」
「もしかしたら手がつけられない状態になるかも知れないので、オヤジ殿のお手を煩わせてしまうかも知れません」
「それは構わないがな」
間空が含むように笑うと、留火はドアを閉めた。
ゆりは閉ざされたドアをじっと見た。
「結……大丈夫かな?」
ぽつりと呟いた途端、不安が渦を巻いて押しよせて、居ても立ってもいられなくなった。ゆりは勢い良く立ち上がり、ドアへ向う。
「こっそり覗くくらい良いよね。結に何かあったら嫌だもん」
自分に言い訳をして、ゆりはドアノブに手をかけた。