私の中におっさん(魔王)がいる。~雪村の章~
第十二章・告白
ゆりは部屋の中でため息をついた。
ベッドから降りて、窓際から青白い光を見つめた。
月が妙にキレイで、ゆりは月を見つめながら、ぽつりと息を吐く。
「月鵬さん、無事かな」
零した言葉と裏腹に、彼女の胸を閉めていたのは雪村と結だった。
もちろん月鵬の無事も祈ってはいたが、それを追い出すように彼らの顔が浮かんできては消えてくれない。
ゆりは認めたくなかった。というよりは、認めるわけにはいかなかった。彼への想いがなんなのか、それを認めることは友人への裏切りに他ならないからだ。
「ふう……」
ゆりは大きく息を吐いて、ベッドへと戻った。
腰をかけて何気なく正面の壁を見つめる。
それにしても、とぽつりと考えが浮かぶ。
間空の言っていた『奴の結論によって』とは誰のことなのだろう。
間空に茶化されたし、なんとなく怖くなって訊けなかったが、今更になって気になってきていた。
ゆりが呼ばれた理由は判明したが、それは当初の予定というニュアンスだった。結局曖昧なままなような気がする。ゆりは口を尖らせながらベッドに倒れ込んだ。
「考えてもしょうがないかなぁ……私は間空さんじゃないんだし」
割り切るように言って、ゆりは大きく手を叩いた。
「よし! 寝よう!」
毛布に潜って目を瞑ったが、雪村の顔がふと浮かんできて、暫くの間ゆりは寝つけなかった。
その五日後、風間が戻るはずの日に一匹のドラゴンが飛来した。それは伝使竜といって、灰色の小型のドラゴンだった。
伝使竜が運んできた小さな巻物を取り外し、伝書係のアンリ・ヘルが廉抹へ運んだ。
廉抹はそれを受け取り、開くと、どことなく渋い顔をした。
「雪村様は?」
廉抹がアンリに尋ねると、彼女は若干怪訝な瞳を向けながら静かに答えた。
「お出かけになっているようです」
「……そうか」
眉根を寄せたのままの廉抹を、アンリは怪訝の色濃く見つめた。