何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【前編】
「何が…不満なの?」
「あ?」
「何が望みなの?」
そして天音は、その理由を知りたかった。
「は?そんなのお前に言ってどうする。」
「私に何かできる事ある?」
天音の必死な瞳は、月斗を捕らえて離そうとしない。
そして月斗は、知っていた。天音と同じこの瞳を持つ人間の事を…。
「もう、気がすんだろう。帰れ。」
月斗は天音のその視線から逃れるように、そんな言葉を吐いてプイっと横を向いた。
「花火…。」
しかし、天音の口はその動きを止める事はない。
「花火また上げてね!」
天音はニッコリと笑ってその言葉を言って、その場を去った。
どうしても、それだけは伝えたかった。
なぜだか、あの花火だけは、天音の心を捕えて離さなかった。
「くっそー!」
天音の去っていた後、月斗はその場にしゃがみ込み苦し気な声を上げた。
天音のその瞳は、月斗のよく知る人にとても似ていた。
それは、どこか強く真っ直ぐで迷いのないその瞳。
そのヒトの事を思出すだけで、月斗の心は大きく揺さぶられていた。