何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【前編】
「それって、京司のせいだよ。」
しかし、そんな言葉を聞いた天音は、いつもとは違う、少し強い口調で躊躇なくそう言い放った。
「え…?」
「そんな風に思っているから、周りに人がいなくなるんじゃないの?」
「…。」
天音の真っすぐな視線が京司に突き刺さった。
京司の周りには、そんな風に自分の考えを真っすぐぶつけてくる者なんていない。ましてや、彼にお説教する者なんていない。
「偉そうな事言ってごめん。怒った?」
視線を落としてしまった京司を見て、天音は少し言い過ぎたかと思い、すぐさまフォローをいれる。
「…でも、人は一人じゃ生きられないんだよ。」
しかし、天音はやっぱりそれを言わずにはいられず、今度は遠慮がちに、ポツリとつぶやいた。
「…。」
「あ…ねえ、知ってる?ウサギって寂しいと死んじゃうんだって。」
やはり怒らしてしまったかと思った天音は、話題を変えるため、そんな事を口にしてみた。
確かそれはじいちゃんから聞いた話だったはず。
「…俺も、そのうち死ぬのかもな、寂しすぎて…。」
「京司…。」
すると、京司は下を向いて、か細い声でそうつぶやいた。
何気なく口にした自分の言葉に、そんな答えが返ってくるなんて思いもしなかった天音は、彼の後頭部をじっと見つめた。
「…。」
しかし、京司は黙ったまま、鯉の方へと視線を移した。
…こんなのはいつぶりだろう。
こんな風に自分の気持ちを誰かに話すなんて…。
ましてや、本音や弱音など見せられる者なんて、この城にはいない。
彼女は、こんな自分をどう思ったのだろうか?京司は、怖くて天音の顔を見る事ができない。