何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【前編】
じいちゃんから、そんな謝罪の言葉が出てくるなんて、天音は思いもよらなかった。
そして、初めて見たじいちゃんの表情に、天音は戸惑いを隠せない。
「何言ってるの?そうじゃないよ。じいちゃんの体の事が心配でね。」
何だか話が噛み合わない。
ただ、これからの事を話したかっただけなのに。
じいちゃんに、こんな言葉を言わせたかったわけじゃないのに…。
天音は、やはり戸惑いの眼差しで、じいちゃんを見つめた。
「いいんじゃ。お前ももう17じゃ。いつでもこの村を出て…。」
いつから、じいちゃんはそんな事考えていたの?こんなんじゃダメだ。このままじゃ、ダメなんだ。
その時、天音の中から、戸惑い、不安その他の悶々とする気持ちがスルッと抜け落ちた。
「もう怒った !!」
そして、天音が突然机を叩いて、大声を上げた。
「は?」
突然そんな大声を出した天音に、じいちゃんは目を丸くして、ポカンと天音を見つめた。
「わかった!私出てくよ!!」
「そうか…。」
そんな天音の気迫に押されたのか、じいちゃんは、天音の決断になんともあっさり頷いてみせた。
「ちょっと来て!!」
そう言うと天音は、昨日じいちゃんが転倒した事も忘れ、強引にじいちゃんの腕を引っ張り、外へと連れ出した。