何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【前編】
「さ、これで集まったわね。」

ここで、かずさが仕切り直しと言わんばかりに、口を開いた。

「…なんやかずさも、こいつ知っとんのか?」

りんはいよいよ、わけがわからず、かずさの方を訝しげに見つめた。
ちゃんとこの状況を説明してもらわなければ、納得いかな事ばかりだ。
そして、恐らくこの状況を一番理解しているのは、かずさで間違いない。

「ええ。これで、使教徒が集まった。」

そんなりんの疑問に答える形で、かずさが淡々と話を始めた。

「は!?」

そして、今日何度目かのりんの大声が山の中に響き渡った。

「使教徒は全部で七人。」

かずさは、そんなりんに構う事なく、話を進める。

「ま、まちーや、かずさ。まさか、ここにいる四人が…。」

りんは、いよいよ手に負えないほどうろたえ始め、かずさの話を止めにかかった。
しかし、そんな二人のやり取りを、天音はただキョトンとした表情で見ているばかりだ。

「いいえ三人。」
「三人て…。」

りんは恐る恐る尋ねた。

「何の話?そう言えばみんな知り合い?」
「天音、そ、そっちかいな。」

天音は、まったく二人の話が読めず、またここでも空気を壊しにかかる。
そんな天音にりんは、またもや華麗にツッコミを入れ、何とか処理しにかかるが、何と説明していいのやら、りんの頭も大混乱だ。

「まあ、顔見知りってとこかしら。」

かずさは相変わらずクールに淡々と答えるだけ。しかし、今日は天音の問いにちゃんと答えてくれるだけましだ。
そして、何とも不思議なやり取りが続けられていくのを、京司は遠まきに見ていた。

「ふーん。」
「ま、使教徒同士仲良くしましょう。」
「で、使教徒って何?」

天音がそこで、その聞きなれない言葉の意味を、やっとかずさに尋ねた。
天音はその言葉が理解できず、ずっとモヤモヤした気持ちでいたため、話の先に進めないでいた。
そして、それは京司も同じ。京司も以前に、かずさから聞いたその言葉に、今もピンと来ていない。

「使教徒は、神に選ばれし者で、神秘の力を持つもの。使教徒を集めれば、奇跡の石も見つかるわ。」

かずさがここで初めて、天音の目をしっかりと見て、彼女の疑問に答えた。
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