何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【前編】
『天音、奇跡の石を探すんだ。それが君の母親が君に伝えたかった事だ。』
天音の脳裏には、あの兵士の言葉がよぎった。
まるで、何かとリンクしているようだ。
石
石
石
「私は石なんて知らないよ!選ばれし者なんて、そんなはずない…。だって私は…。」
——— 私は親に捨てられた子なんだから。
「…ただの田舎者だよ…。」
しかし、頭に浮かんだその言葉は、口にすることはできなかった。
——— それは自分が惨めになるのが嫌だから?
「天音!」
京司が天音を呼び止めるも、彼女は突然走り去ってしまった。
「彼女は、まだこの現実を受け止められないのね。」
かずさは相変わらず、淡々とした声で、そうつぶやいた。
「なんなんだよお前は。なんで俺が使教徒だって知ってんだよ。」
すると今度は月斗が、かずさを睨みながら、口を開いた。
どうやら月斗は京司とは違い、使教徒という言葉を前から知っていたようだ。
そして、自分がそれである事も…。
「…お尋ね者のあんたも使教徒やなんてな。あんたも石の事知ってたんかいな?」
かずさは、そんな月斗の問いには、全く答えるそぶりを見せず、口を結んだままだったが、代わりに口を開いたのは、りんだった。
「京司。石を手に入れたいのなら、本気で向き合っていくことね。」
「は?」
今度はかずさが京司の方を見て、そんな意味深な言葉を言い放った。
しかし、京司はその言葉の意味を理解する事ができず、また眉間にしわを寄せるしかなかった。