何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【前編】
チッチッチ

時は刻一刻と流れる。
食堂では、天音以外の妃候補は全員集まっていた。

「どーしよー。やっぱり天音来ないよ。」

華子は半泣きで、天音を置いてきた事を、心底後悔していた。

「…。」

星羅は無表情で何も答えない。

「せいらー!」

チッチッチ

「ん?一人いないぞ?」

ついに、夕食が始まり、点呼の兵士が華子達のテーブルの前にやって来てしまった。

「あ、あのー、天音…ちょっと。」

華子は、なんとかその場を取り繕うとするが、しどろもどろになってしまう。
華子はどうやら嘘が下手なようだ。

「天音…お腹が痛くて!」

なんとか搾り出した言い訳はそれだったが、兵士は訝しげな表情で華子を見下ろしていた。

バタン

その時、すごい勢いで食堂の扉が開いた。

「はあ、はあ、す、すみません!」

天音は息を切らしたまま、そのまま食堂へと足を踏み入れた。

「天音!」

華子は天音の姿を見て、嬉しそうに声を上げた。

「あと一人はお前か。早く座れ!」
「す、すみません。おなかが痛くて。」

天音は何故かとっさに、華子と同じ嘘を吐いて、そそくさと席につく。

「次はないからな。」
「は、はい!」

天音は、今回の事で目をつけられてしまったかもしれないが、なんとか今回は見逃してもらえた。
そして、天音は安堵の表情で大きく息をついた。
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