何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【前編】
「もー、よかったー。」
そんな天音の隣で、華子も安堵の表情を見せていた。
「ごめんなさい…。」
そんな華子の様子を見て、天音はしゅんとして下を向いた。
華子が心配してくれていたのは、痛いほど感じていたからだ。
「もー!心配させて!」
しかしそんな華子は、天音の隣ではにかんで笑ってみせた。
「…。」
しかし、星羅はやっぱりそっぽを向いて、何も言わず、食事を始めていた。
「ありがとう、華子、星羅。」
「え…?」
星羅は、まさか自分がお礼を言われるなんて、思ってもいなかったのか、思わず食事の手を止めた。
「星羅がああ言ってくれてよかった。私ね…いっぱい期待してここへ来た。」
『何かピンと来たんだ!!』
「…。」
星羅はそんな天音の言葉を、ただ黙って聞いていた。
「だから、後悔しないように、やるべき事してから帰えらなきゃね!」
天音はもう、うだうだ考えるのはやめにした。
やっぱり自分の直感を信じたかった。
ここへ来たことは、間違いだったなんて思いたくない。
「…あっそ。」
そんな天音の言葉に、星羅はそっけなく答え、また食事を続けた。
「もー、星羅は相変わらずクールなんだからー。」
華子は、わざと星羅を茶化すようにそう言って、笑った。
ここに来なかったら、星羅と華子と出会うこともなかった。
二人はなんだかんだで、天音の事をいつも心配してくれる、大切なルームメイトだ。
天音はその思いを胸に、いつものように食事を始めた。