何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【前編】
「ただいまー!」

天音は元気よく、いつもと変わらない自分の家に帰って来た。

「おかえり。」

そして、じいちゃんは、今日もいつものように天音に笑いかけ、迎えてくれた。
じいちゃんの腰もだいぶよくなって、前と同じように動けるまでに回復していた。

「明日までに、急いで服作ってくれるって!!」

天音はうれしそうに、じいちゃんにその事を報告をした。

「そうかい。」

じいちゃんは、やっぱり優しく微笑んで、天音の話に耳を傾ける。

「ま、妃になったら、いっくらでもお返しするけどね!」

天音はどこからやってくるのやら、自信満々にそう言った。

「で、いつ発つんだい?」
「明日。」
「そうかい。」

思い立ったら吉日。天音は、この村を発つ日を明日と決めていた。そして、それをあっさりとじいちゃんに告げた。
妃候補募集には、期限がある。この村から城に行くには、下手すると数日かかってしまうため、一刻も早く発たなければならない。
しかし、明日とはまた、唐突すぎる。普通ならそう考えるが、じいちゃんもまた、驚く事もなく、表情ひとつ変えずに頷いた。



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