何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【前編】
「まさか…京司…なの!?」
そして、その光景を目の当たりにしていた人物がもう一人いた。
「やっぱり。来たようね。」
「…。」
そう、その光景を木の陰からそっと見ていたのは、星羅だった。
そして、星羅にここへ来るよう伝えたかずさも、見物にやって来たようで、星羅の気付かぬ間に、すぐ横にいたようだ。どうやら、全く気配を出さないのは、かずさにはお手の物のようだ。
そんなかずさを見て、星羅はまた怪訝な顔を見せた。
「まだ名乗ってなかったわね。私はかずさ。あなたと同じ使教徒。」
「…使教徒。」
星羅は、その言葉に心当たりがあるのか、噛み締めるように、それをつぶやいた。
(やはりこの女もそうだったか…。)
星羅にはわかっていた。かずさもそうであるにちがいないと。
「会えたでしょ?あなたの会いたかった人に。」
「…。」
その言葉に星羅はまた、口を硬く結んだ。