何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【前編】
「頼む…。」

そう言って、京司は地面にひざをついて、土下座をし始めた。

「京司…。」

隣にいた天音は、京司の強い思いを感じていた。
彼は、何としてもここを守りたいんだ…。

そして天音も同じ思いであった。この町には、天音の村にはないお店や食べ物があり、確かに裕福な町だが、それがこの町の魅了でもある。そんな町が壊されるのは、胸が痛む。

「お前の土下座に何の価値がある!」

しかし、そんな京司を見てリーダーは、罵声を浴びせるだけだ。京司の思いは天音にしか届かない。

「…。」

りんは固唾(かたず)を呑んでその様子をじっと見つめていた。


価値?
俺の価値?
天使教の価値?

なんだそれ?


「アハハハ!」

その瞬間、突然、後ろでその様子を見ていたはずの月斗の笑い声が、その場に響き渡った。

「傑作だな。」

京司の無様なその様子を馬鹿にするように、月斗が言葉を吐き捨てた。

お前一人に何ができる?
その立派な名前には何の価値もないんだよ。
まるでそう言われているも同然だった。

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