何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【前編】
「彼女は国のために戦い、力尽きた…。」
辰は彼女の墓の前で、ゆっくり口を開いて、天音に語り出した。
どこか悲しげな彼の瞳は、じっと天音を見つめていた。
「…。」
天音は、そのお墓を見つめるばかりで、何も答えようとはしない。
その表情からは、彼女の感情は全く読み取れない。
「彼女は最後まで天音の事を…。」
辰は、いつのまにか、彼女の思いを伝えられずにはいられなくなっていた。
ジャンヌがそこで聞いていると思うと、いてもたってもいられなくなったのだった。
「聞きたくない…。」
天音は、やはり今もまだ、全てを受け入れられないでいた。知らなければいけないと、頭では理解していたはずなのに、それを受け入れる覚悟が全く足りてはいなかった。
彼女の心はまだ準備不足だと悲鳴を上げ、きつく彼女の心を締め付けた。
そして、彼女はその痛みに顔を歪める。
国のために戦った?
力つきた?
そんなのは、私には何の関係もない話でしょう?
「一人にしてもらえませんか…。」
天音が消えそうな声で、ポツリと小さくつぶやいた。
辰はそんな天音の苦悩の表情に何も言う事ができなくなり、ゆっくりと彼女に背を向けた。