何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【前編】
「天音見なかった?」
「おう!星羅。まーた天音探しとんのかー?」

久しぶりに星羅は、町に出ていた。
そして、そこで出くわしたのは、お馴染みのりんだった。
りんは、星羅に話しかけられた事に機嫌を良くしたのか、嬉しそうにニッと笑って答えた。
どうやら星羅が町に出てきたのは、天音を探しに来たためのようだ。
しかし、夕食時までは、まだ充分に時間はある。

「なんや?またなんかあったんかー?」
「…別にたいしたことじゃないのに、華子が…。」

りんは、興味本位で星羅にそう尋ねたが、星羅は不服そうにそっぽを向きながら、言葉を濁すようにつぶやいた。
その様子から見て、どうやら星羅は華子に付き合わされて、仕方なく天音を探しているのだと、りんはすぐに推測する。

「なんやそれ!」

りんは、ハハハと笑い、子供のような笑顔を見せた。
しかし、星羅は、そんなりんの笑顔を100パーセント信用しているわけはなく、相変わらず冷たい視線をりんに送るだけだった。

「ほんま冷たいなー。」
「オイ!!」

そこに聞こえたドスの効いた低い声に、星羅は聞き覚えがなく、勢いよく振り返った。
しかし、星羅とは反対に、りんはその声に聞き覚えがあるのか、ビクっと肩を震わせ、恐る恐るゆっくりと振り返る。
そこに居たのは、二人の予期していなかった人物だった。
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