何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【前編】
それから数日

「おっかしーな。」

りんは、この町にある唯一の小さな図書館で、調べものをしていた。
この図書館は国が運営していて、もちろん誰でも入る事ができ、そこにある本を読む事ができる。

「何調べてるの?」
「おう!星羅やないか。」

実は、本好きの星羅も本を探しに、この図書館へちょくちょくやって来ていた。
そんな星羅は、そこでうんうん唸っているりんを見かけ、思わず声をかけた。
彼の前には、積み上げられた本が何冊もあり、何か調べものをしているのは、側から見ても明らかだった。

「内緒や!」
「…そう。」
「もっとつっこんでーや。」

星羅のクールな対応に、りんはどこか物足りなさを感じ、思わずつっこんでみたものの、やはり星羅のその態度は全く変わらない。
彼女のクールな仮面をはぎ取るのは、まだ今のりんでは無理のようだ。

「そうや!天音の様子どうや?」
「え?」
「この前会った時は、何や元気ないみたいやったから。」

実はりんも華子にああ言ったものの、その後の天音の様子が気になっていたのだった。

「…毎日どこかへ出かけてるみたい。」

星羅も、ここの所の天音の異変に気づいてはいたものの、深くはつっこんで聞こうとはしていなかった。
ただ、天音は授業が終わるとすぐに城を出て、どこかへ出掛けているようではあった。
そして、ちゃんと夕食の時間には、城に戻って来ていた。

「そうか…。」
「やっぱり、あの子はダメね。」

星羅は冷たく言い放つ。
星羅は、やっぱり今も、天音は妃には向かないと思っているようだ。

「やっぱり星羅はクールやな。華子とは大違いや!」
「あの子と一緒にしないで。」

星羅は迷惑そうに、りんに視線を向けた。
するとりんは、いつものように、ニコニコとした笑顔で星羅を見ていた。その胡散臭い笑顔が、星羅はいつまでたっても慣れない。
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