何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【前編】
「え?どうすればいいの??」
「それは中に入ってのお楽しみ、てとこかいな。」
天音はおばあさんに尋ねたつもりだったが、おばあさんの代わりに、その男が笑みを浮かべ答えた。
そして、彼が天音の背中をポンと軽く押した。
「よいか。目を閉じて、まっすぐこの道を行くだけじゃ。決して目を開けてはならぬ。」
先程とはうって変わって、おばあさんが素直に通り方を教えてくれた。
しかし、そのおばあさんの声が、今はどこか遠くに聞こえる。
「ホナ、行こかー。」
「へ?いやまだ心の準備が…。」
彼が呑気な声で先に進む事を促し、天音は半ば強引に扉の中へ押し込まれた。
「コラ!お前まで!」
どうやらおばあさんは、彼の事は中へ入れるつもりはなかったようだったが、その男はどさくさに紛れて、天音と共に扉の中へと入ってしまった。
そして、その門の重い扉は閉ざされた。
「まったく…。道は真っ直ぐ一本のみ…。」
一人その場に残されたおばあさんは、呆れながらも、ポツリとそうつぶやいた。