何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【前編】
「言わずに天音と会っているのでしょう?あなたが天師教だという事を…。」
ザ―
雨の音がうるさい程耳に響く。
その時、京司は足を止めた。
そんな京司の前に、バチバチと音をたてる、電発塔が目に入ってきた。ニ人は、いつの間にか電発塔に到着していた。
電気を供給するであろう電線は切れていて、火花を上げていた。
バチバチと音を上げるその線を、京司は虚ろな目で見つめていた。
「やはり…。これは、修理が必要だな。」
辰は電発塔に目を移して、ボソッとつぶやいた。
「俺は…。」
そして、今度は京司は小さな声でつぶやいた。
知ってる…。
『悪魔の子…』
背負うもの…。
『お前は今日から玄武の宮。京司という名は忘れろ。』
「天師教…?」
辰は、どこか焦点の合わない目で一点を見つめる京司の異変に気が付き、彼に声をかけた。
『お前なんかが、天使教になれるわけないだろう!!』
「俺は天師教なんか!」
ピカー
その時、激しい雷の光が、空をまたたく間に駆け巡った。
「あぶなーい!!」
ドーン!!
辰の声と雷の音は見事に重なった。
そして、真っ暗な闇の中に一筋の光が、空から落とされていった。