何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【前編】
「こっちや!!」
りんは、町の人や医者を呼んで来て、もう一度電発塔へと走った。
この大雨で外には人っ子ひとりおらず、人を呼ぶのにかなり手間取ってしまった。
「え?」
りんはその光景を見て、息をのんだ。
「兄ちゃん、誰もいないけど…。」
「…。」
連れて来たうちの一人の男性が、周りをキョロキョロ見回しているが、そこには人っ子一人居ない。
そう、そこに居たはずの二人は、跡形もなく居なくなってしまった。
まるで、始めから何事もなかったかのように。
「何や、早いなー…。」
りんがポツリと小さくつぶやいた。
りんは、瞬時に理解していた。城の者が町民に気づかれる前に、二人を城に連れて帰ったのだろうと…。