何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【前編】
「間違っていたの?」
一人の女性が窓の外を見ながら、悲し気につぶやいた。
彼女は薔薇の装飾がほどこされた、その豪華な服を身にまとい、長い髪はアップにされ、様々な宝石によって装飾された髪飾りによって止められていた。
その身なりと彼女の内側から溢れ出る気品が、どこからどう見ても身分の高い者だと示している。
「皇后様…。」
彼女の後ろに立つ一人の老人が、彼女を心配する様子で彼女の事を呼んだ。
そう彼女は、亡くなった前天師教の妻であり、皇后。
「あの子を…玄武の宮を天師教に…。」
つまり彼女は玄武の宮の母親だ。
そして、その悲しみと後悔に満ちた瞳は、どこか遠くを見つめていた。
どんなに後悔しても、もう遅いのはわかっている。
なぜなら明日、彼は天師教に即位するのだから———