何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【前編】
「確かあっちの方にコイがいたんだよな…。」
指示通り、部屋へと向かう長い廊下を華子と二人並んで歩きながら、天音がポツリとつぶやいた。
星羅と言えば、そんな二人を残し、さっさと部屋に戻ってしまっていた。
「あっちの方は、皇族とか偉い人の敷地なんじゃないの??」
華子は、そんな天音のつぶやきもちゃんと見逃さず、その視線の先を一緒に見つめた。
やはりこの城の中は、迷路のように入り組んでいて、その先に何があるのかはわからないが、先ほどの説明によると、妃候補が立ち入っていい敷地は限られていた。
もちろん、城内部の地図もちゃんと配られていた。
しかし、方向音痴で地図もまともに読めない天音には、それは何の意味も持たない。ただの紙切れにすぎない。
「皇族の敷地なんかに勝手に入ったら、ここ追い出されるよー。」
「うん…。」
華子が天音を脅かすように、わざとおどけてそう言った。
それは天音もわかっていた。そのためにこの地図が配られているのだから。
でも、天音は頭でわかっていても、どこか腑に落ちない返事を返してしまった。
『またな。』
それは、彼のその言葉が、なぜか忘れられないからだろうか。
指示通り、部屋へと向かう長い廊下を華子と二人並んで歩きながら、天音がポツリとつぶやいた。
星羅と言えば、そんな二人を残し、さっさと部屋に戻ってしまっていた。
「あっちの方は、皇族とか偉い人の敷地なんじゃないの??」
華子は、そんな天音のつぶやきもちゃんと見逃さず、その視線の先を一緒に見つめた。
やはりこの城の中は、迷路のように入り組んでいて、その先に何があるのかはわからないが、先ほどの説明によると、妃候補が立ち入っていい敷地は限られていた。
もちろん、城内部の地図もちゃんと配られていた。
しかし、方向音痴で地図もまともに読めない天音には、それは何の意味も持たない。ただの紙切れにすぎない。
「皇族の敷地なんかに勝手に入ったら、ここ追い出されるよー。」
「うん…。」
華子が天音を脅かすように、わざとおどけてそう言った。
それは天音もわかっていた。そのためにこの地図が配られているのだから。
でも、天音は頭でわかっていても、どこか腑に落ちない返事を返してしまった。
『またな。』
それは、彼のその言葉が、なぜか忘れられないからだろうか。