何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【前編】
「やっぱり、ブサイクなのかな?」
「は…?」
そしてまた、京司の予測を超えた天音の言葉に、京司は目を丸くし、ハトが豆鉄砲でも食らったかのような顔へと、みるみるうちに変化させた。
「だって、村の人も言ってたよ。妃を募集しないといけないなんて、よっぽど…。」
「クックック。」
京司はこらえきれなくなり、また笑いをこぼした。
…コイツ本人目の前にして何を!しかもその村人達も言いたい放題じゃないか。
「あ、でも京司なら会った事ある?天師教さん。」
「え…。」
次の瞬間、京司は笑いを止め、言葉を失った。
しかし、目の前の天音は、目を輝かせて、興味深々だ。
そう、彼女は何も知らないのだから当然だ…。
「どうしたの?」
突然の困惑顔の京司の様子に、天音も気がついて、彼の顔を覗き込んだ。
「知りたい?天師教の事?」
京司が急に真剣な顔で、天音を真っ直ぐと見つめた。
「え?うん、まー…。」
天音はそんな京司の初めて見る真っ直ぐな瞳に、少し困惑しながら答えた。
「…そうだなー。顔は、俺といい勝負かな?」
「もー、何それー!」
すると、京司は真面目な表情を一変し、悪戯に笑いながら、まるで天音をからかうような一言をおみまいしたのだった。
京司のそんな冗談に、天音も思わず笑った。
「そろそろ私部屋に戻らなきゃ。また迷子になってると思われちゃう。」
「ああ。」
「じゃ、またね。」
そう言って天音は、その場を去っていた。
そして京司は、またその寂しげな瞳を月へと向けた。