何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【前編】
「しかし、それ以前は、一体この国はどうなっていたのか…。」
そして士導長は、また授業を進めた。
「この地球は一度滅びておる。」
「え!?」
すると突然天音は、なぜか士導長の言葉に過剰に反応し、人目も気にせず、大きな声を出して驚いてみせた。
「どうしたんじゃ?天音?」
「いえ、は、初めて聞いたんで…。」
その声は、もちろん士導長の耳にも届いており、天音のその反応に眉をひそめた。
思わず声を出してしまった天音は、自分でもなんでこんなに動揺しているのか、よくわからない。
しかし、胸の鼓動が、微かに早くなっているのを、確かに感じていた。
「その昔、地球は滅びたという言い伝えがある。」
「はい!ど、どうしてですか?」
天音はいてもたってもいられなくなり、手を大きく上げて、その疑問を士導長に投げかけた。
「うーむ、それはいろいろな説があってのう。」
「…。」
天音はなぜだかわからないが、その理由が無性に気になって仕方ない。
なぜこの地球が滅んだのか…。
「昔、この地球は、今の国という形とは違って、一つの星と呼ばれていた。そしてその星の中には、たくさんの国があったそうじゃ。国と国は時に助け合い、時に争い合った。」
「争い…?」
リーンゴーン
その時タイミング悪く、鐘が鳴った。
「おっと時間じゃ。続きはまた今度じゃな。」
そう言って、歯切れの悪い所で、士導長は授業を終わらせてしまった。
『その昔地球は滅びた。』
その言葉を聞いた時、天音は確かに何か違和感を感じた。
何かしっくりこないような…。
…私…何か忘れてる?
しかしその答えはわからずじまいで、天音はそんな消化不良のまま、次の授業を受けるしかなかった。